「羊と鋼の森」

2-0364.jpg宮下奈都の「羊と鋼の森」を読みました。「」で会った時に元テレビディレクターOさんから頂いた中の1冊で、宮下奈都? 松下奈緒?という感じで全く予備知識なく、映画化されたのも知らずに読んだけど、とても良かった。なるほど本屋大賞をとるだけのことはありますね、良い作品に出会わせてもらいました。ピアノ調律師として音と向き合い、成長していく青年を描いた、「舟を編む」や「神去なあなあ日常」にも通じるお仕事小説。どの仕事も奥深いけど、これはピアノの音色の純粋さにも通じる外村のひたむきさが清々しい。特別な才能がある訳ではないという自覚、どこまで行けるのかという不安。でも、確実に前へ進んでいる若さが懐かしくもあり、愛おしい。
「森の匂いがした」で始まる導入は、情緒的な底の浅い作品ではという印象を抱かせたけど、すぐにそれは全くの勘違いだと気づきました。ピアノは鍵盤を叩くと中のハンマーが弦を叩いて、音が鳴り、音色を決めるのに重要なのがハンマーにかぶせる羊毛のフェルト。だからピアノが作る世界が羊と鋼による森と表現されていたのでした。モモ母の高校の同級生N君も楽器店に務める調律師で、楽器店主催のチョロ教室の発表会で彼が弾くピアノ伴奏のファンだったりするんですが、調律師ってこんな人たちなんだ・・・と初めて知って新鮮な感じ。家庭のピアノから素晴らしいピアニストが誕生したり、調律を手がけたコンサート会場のピアノで鳥肌が立つような芸術的演奏が奏でられたり。それにしても、我が家のピアノは雑な使い方をしたうえにほったらかしになってて申し訳ない・・と、今更ながらに思うのでした。
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「細雪 下巻」

2-324.jpg「細雪」下巻を読み終えました。下巻の内容はまるで憶えてなくて、初めて読む感覚で楽しめました。さすがに戦争についても書かれてますが、大垣での蛍狩りや河口湖半への旅の様子などが優雅に描かれています。但し、幸子夫婦が滞在した奈良ホテルは南京虫がいるひどいホテルという設定、谷崎は何か嫌な思いでもしたんでしょうか?
妙子は下巻でも赤痢になったり流産したりと散々な目に。4人姉妹の中でも妙子は変わり種と表現されてますが、今は彼女のような女性が多くて、見合い相手からの電話に恥ずかしくて出られない雪子のような女性の方が寧ろ稀有。だからこそ谷崎は滅びゆく美しいものの象徴として雪子を主人公にしたんでしょうね。本家を立てたり、「筋違い」の言動を嫌うのは家柄を大事にする価値観の中で生きる姉妹たち故かも知れませんが、芸事のたしなみにも時代を感じます。幸子の娘の悦子、女中のお春どんも含めた女性たちは日舞や三味線などを習っていて、歌舞伎の知識も豊富。そういえば、子どもの頃、仲の良かった子のお母さんに踊りの会に連れて行ってもらったっけ。娘時代に発表会で藤娘を踊ったという話を高齢者からよく聞きます。昔は数え年6歳の6月6日に芸事を習い始めると上達するなどと言われましたが、今はピアノやダンスを習う子はいても三味線や日舞を習う子は稀だろうし、6月6日にこだわる親も滅多にいないでしょうね。「こいさん、頼むわ」で始まるこの小説、終わりはどんなだったかすっかり忘れてたけど、雪子に関する意外な描写でしめられていたのでした。またいつか再読しようと思っています。(※こんなブログみつけました!)

「細雪 中巻」

3-315.jpg谷崎潤一郎の「細雪」を楽しく読んでいます。上巻は三女・雪子のお見合いを軸に展開したけど、中巻は四女・妙子が前面に出る展開。人形制作から洋裁に興味が移って洋行を希望したり、山村流の舞を披露したり、水害に巻き込まれたり。かつての駆け落ち相手だった啓坊(けいぼん)こと奥畑も冒頭から登場し、水害の時に命懸けで妙子を救った写真師の板倉も重要な役割を果たします。確か板倉って亡くなるんだよねと思っていたら、中巻のラストで絶命。その顛末が前に読んだ時も不気味だったけど、今回もやっぱり怖かった。板倉より家柄の良い奥畑と結婚する方がマシという姉達の発想や東京を訪れた際にローマイヤアで食事したり、歌舞伎を観たりする優雅さはいかにも昭和の旧家。大阪らしい言葉遣いも含めて「かつていた人達」だなと思う。些細な出来事、日常の会話が巧みに挿入されていることで、暮らしぶりがリアルに伝わって来ます。この作品には谷崎特有の倒錯した世界は描かれてないんだけど、幸子の夫の貞之助が帰宅すると雪子が妙子に足の爪を切ってもらっていて、貞之助が襖を開けたら雪子が足の甲をすっと裾の中に入れる場面が印象的。さすが足フェチの谷崎らしいなと思ったのでした。
1983年に市川崑が「細雪」を映画化していて、「ラルゴ」のメロディと幸子を演じた佐久間良子の美しさが印象的だったんですが、奥畑を桂小米朝(現・桂米團治)さんが演じていたんですよね。小米朝さんのラジオ番組の構成をすることなった時、「細雪に出てた人」とお仕事するのが不思議な気がしたのを思い出しました。懐かしいです。映画、また見たくなりました。「平成細雪」は未見。モモ母はアサヒビールのCMの美女3人に平成の細雪をやってほしいです。

「仮面の告白」&「細雪 上巻」

2-0295.jpg三島由紀夫の「仮面の告白」を読みました。昨年読んだ「午後の曳航」がすごく良かったから他の作品を読みたくなったんですが、これは合わなかったですね~。祖母に溺愛され、祖母が選んだ女の子とだけ遊んでいた子供時代など自伝的な要素が強く、当時としてはセンセーショナルだった同性愛的な志向を描くなど、文学的な意義はわかります。でも、作家の若さが読んでてちょっとしんどかったです。「聖セバスチャンの殉教」の絵画って、なんでこんな残酷な場面を描くかなぁと思いながら、つい怖いものみたさで見てしまう感じがありますが、ゲイの象徴になってたとは初めて知りました。


2-0296.jpg続いて谷崎潤一郎の「細雪」の再読を始めました。natsunoさんが「細雪」を読まれた記事を読み、自分も読んでみようと思ったのでした。「仮面の告白」と時代背景や発表年代が近いのに全然印象が違って、戦時色を全く感じさせない小説です。軍部から雑誌掲載や私家版の配布を禁じられてたにも関わらず、執筆を続けた執念。今、読むと学生時代とは違う感慨がありました。描かれた関西の生活文化は子供の頃、こういう感じの人たちっていたなぁ、こんな会話いかにも言いそう・・という懐かしさ。魚は鯛、花は桜と言って毎年同じ場所へのお花見を繰り返す、育ちの良さを感じさせるおっとりした感じ。多分、学生時代はまだそんな世界が身近に残ってたから、普通に読んでたんでしょうね。渋谷の風景も「春の小川」の河骨川があった頃ののどかさがあって興味深い。詳細はすっかり忘れてたけど、次女幸子の娘の悦子が路上の鼠の死骸を異様に恐れる場面だけは印象に残っていて、ああ、これは上巻にあったエピソードだったんですね。やっぱりモモ母は谷崎が好き☆

「風雪の檻~獄医立花登手控え(二)」

2-268.jpgかなり前ですが、藤沢周平の「風雪の檻」を読ました。「春秋の檻」に続く獄医立花登手控えの第二弾短編集です。登は起倒流の柔術の使い手という設定。牢獄の罪人達の怪我や病を治療する獄医としての仕事には前巻より随分慣れた様子だけど、第一話「老賊」の冒頭から柔道仲間の新谷弥助がこのところ道場に姿を見せていないことが語られ、不穏な幕開け。続く「幻の女」は一度は賭場から足を洗った巳之吉が、昔のつきあいから男二人を殺傷、彼が島送りになる前におこまという女性を探そうとした登だけど、その消息は喜ばしいものでなく、巳之吉に知らせることが良いのか、事実を知らないままの方が幸せなのか。こういう設定がいかにも藤沢周平らしい。
「押し込み」は義賊を気取って押し込み強盗を企てた源次たちだったけれど、同じ店を本職の盗人が狙っているのがわかる。しかもかなりの悪党たち。登はやめさせようとするのに弥助に加勢を頼む。「処刑の日」は限られた時間の中で真犯人を追う緊迫感がエンタメ性抜群で面白い。今回も読み応え十分でした。今回、居候先の娘おちえと登の関係に微妙な変化があるのが興味深い。「春秋の檻」のおちえは派手に遊ぶ我が儘娘で、「登」と呼び捨てにしていたのに、誘拐されて懲りたのか「風雪の檻」では随分しおらしくなって「登にいさん」と呼びように。そしてラストは登本人も驚くような展開に。微笑ましいエピソードだけど、ウブで真面目な登に元ヤンのおちえは手に負えないと思うけどなぁ。次巻が気になります。

「トリップ」

2-252.jpg6日に予定されている財務省の調査報告が、いつの間にか「調査方針の報告」になってました。清水潔さんが若い人に向けたtweetをしてましたが、今までなかった異常事態が続いています。月曜は古賀茂明さんの記事にゾッとしました。着任早々「しゃこたん」発言をした福井さん、温泉豪遊のハレンチ写真が話題になってたけど、こういう報道弾圧をしてきた人を沖縄・北方担当に任命するのが安倍さんなんですね。
さて、角田光代の「トリップ」を読みました。と言っても、読了は1月なのですが、東京近郊の街に暮らす普通の人たちの日常を描いた連作で、1作目は駆け落ちに失敗した高校生の話で、それ以降は前作にモブで登場していた人が次の作品の主人公になっていくスタイル。前作では影が薄かったのに、この人、本音ではこんなこと思ってたのねという面白さ。そりゃ肉屋に嫁いだ主婦だって古本屋でバイトする独身女性だって、一人一人いろんなことを毎日考えてるし、秘密を抱えてるよね。ただ、この本の前にサリンジャーの「フラニーとズーイ」を読んでいたせいもあるのではないかと思うのですが、読みながら登場人物たちの苛立ちや不安定感が伝染してきて、何となくそこで生き続けるって大変だよねと思い、背表紙に書かれた「透明感のある文体で描く珠玉の連作小説」という表現には同意出来ませんでした。

「鏡花短編集」

2-237.jpg「鏡花短編集」を読みました。父の蔵書の1冊で硫酸紙のブックカバーがかかっています。もしかして、北大路駅を「烏丸車庫」と言ってた時代に北大路通りにあった文房具店「三星堂」で買った硫酸紙かも。9つの作品が収められていて泉鏡花の妖しく美しい世界を堪能しました。
最初は有名な「竜潭譚」。見渡す限り紅の躑躅(ツツジ)の花という極彩色な導入から鎮守の社を経て、少年が迷い込んだ夢ともうつつとも知れない世界。いわゆる「神隠し」を語ったもので、続く「薬草取」と共に幻想的な描写に魅了されます。他の作品にも躑躅が頻繁に出てくるなど植物に関する記述が多く、毒虫にやられて倒れたり、河童が出てきたりと動植物との接点が多かった頃ゆえに、今とは比べ物にならないほど魔物の遭遇話が身近だったのだと思ってみたり。面白かったのが「二、三羽---十二、三羽」。最初は自宅にやってくる雀を綴ったやや退屈な随筆かと思っていたら、後半かなりスリリングな展開に。暴風雨の後、訪れたはずの家が消えていた、という「雀のお宿」のような話。「暴風雨」には「あらし」とルビがふられていました。ちなみに「莞爾」と書いて「にっこり」と読むのを初めて知りました。余談ですが、泉鏡花といえば「神楽坂怪奇譚『棲』」、大好きな池田昌子さんの朗読が生で聴けるなんてすっごい貴重、日帰りで観に行こうかと思っていたのに、池田さん出演日は速攻で売り切れてました。しかし予告動画、観ただけで怪しそうです。

「しずかな日々」&「るり姉」

2-203.jpg椰月美智子の「しずかな日々」を読みました。アマゾンの「ポプラの秋」の関連紹介にあって興味を持ったのでした。三島由紀夫とは対照的な「離乳食のような本」だけど、児童文学なので平易なのは当然ですね。母親と離れておじいさんの家で過ごすことになったぼくの小学校5年の新学期から夏休みを綴ったもので、波乱万丈ではなく「しずかな」だけど、それまで友達と無縁だった無口な少年が、押野君と友達になったことで一緒に自転車で知らない町まで工場を見に行ったり、友達が家に泊まりに来たり、寧ろワクワクする幸福な記憶を読者が共有する感じ。お調子者で人気がある押野君みたいな子っていたなぁ。それにしても、この作品にはいじめが全く出て来ない。「えだいち」という呼び名だって学級委員選挙で枝田君はたった1票だったからだし、運動神経ゼロで空き地で野球をしても全然ダメだけど、陰湿な嫌がらせや悪口を言われることなく、そのまんま受け入れられてるんですよね。

2-220.jpg「るり姉」も一緒に買ってみました。三姉妹が慕う母の妹「るり姉」と家族のことを綴っていて、高校生の長女さつきが夏、母のけい子がその春、次女のみやこが去年の冬、るり子の夫の開人が去年の秋、と各章ごとに話し手が変わり、最後の第五章は次女のみのりが4年後の春を語る流れ。1章でるり姉が入院し、4年後は・・と心配をしながら4章を読み進める訳ですが、湯本香樹実ならこうはないだろうなという結末。椰月美智子が楽観的な作家なのかも知れませんが、児童文学は読んで元気になるのが良いんでしょうね。余談ですが、椰月さんのTwitter小田急ブックメイツ新百合ヶ丘店の閉店のお知らせがリツイートされてました。行ったことはないけど、本屋さんの閉店はとても残念です。

「午後の曳航」

2-202.jpg首都圏の大雪に草津白根山の3000年ぶりの噴火。自然のスゴさを思い知らされますね。明日の京都は最高気温2度だって。思いやられます。
さて昨年ですが、三島由紀夫の「午後の曳航」を読みました。三島って10代の頃に「潮騒」を読んだような、漫画だけだったような・・・という今まで殆ど未読の作家だったけど、すっごいハマって楽しかった。久々に「本物の純文学」を読んだ気がする。マドロス演歌が流れてくる様な世俗的な設定を装いながら、格調高く完成度の高い文章。子供たちに潜む未熟さ故の残酷性を読む者に緊張を強いる流れで突きつけていく見事な構成。こういう作品を書く作家って今でいうと誰になるのかな? いないかも。 「現在のベストセラー本は『離乳食』と林修先生が言ったのも納得です。船乗りの竜二に憧れていた登にとって、母との結婚によって世俗的な陸の生活に馴染んでいく竜二は許しがたく、文庫本の裏表紙には「自分達の未来の姿を死刑に処すことで大人の世界に反撃する」と書かれています。昭和38年頃の横浜のエキゾチックさが、作品世界をより魅惑的なものにしていました。幼い頃に親に連れられて歩いた横浜って、まだこんな感じが残っていたなぁ・・・と。

「春秋の檻~獄医立花登手控え(一)」

2-171.jpg5日から配信が始まった「DEVILMAN crybaby」のCMが登場、ナレーションを田中亮一さんが担当していて、テンション上がりました。(本編は多分見ないけど・・・) 亮一さんといえば、こんなツイートも。当時の亮一さんの授業、受けてみたかったです。
さて、年に最低一冊は読みたい藤沢周平の時代小説、昨年は「春秋の檻」を読みました。何だか腐女子向けの陵辱小説みたいなタイトルだね、と思ったけど、7つの短編からなる連作はどれも人情味あふれる良質な娯楽作品でした。主人公の立花登は牢獄に勤める青年医師。叔父の様な立派な医者になりたいとの志を抱いて江戸に出てきたのに、叔父はどうもやる気が感じられないし、居候先の年下の娘に呼び捨てにされたり、こき使われたり、正義感が強い主人公タイプながら、いまいち颯爽としてないところが良いですね。大好きな「用心棒日月抄」と共通する設定もあって、細谷の様な存在が柔道仲間の新谷弥助。今後もこのシリーズに出てくるんでしょうね。立花が獄中で出会った囚人たちの人間模様にジーンとしたり、7作目「牢破り」で叔父の娘のおちえが誘拐されてハラハラしたりで楽しめました。藤沢氏が江戸時代の医学史や経済関係の資料をとても深く読み込んでいるという佐藤雅美の解説も興味深い。シリーズ2作目も楽しみです。
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