「美雪晴れ」

707.jpgみをつくし料理帖」9作目「美雪晴れ」を読みました。・・・と言っても読んだのは随分前ですが。シリーズも次巻で終わり。かつて「天満一兆庵」のご寮さんだった芳も相応しい所におさまり、「つる家」には臼と政吉夫婦が新たに加わり、澪は独立を控えて吉原で卵黄の味醂漬「鼈甲珠」を売るなど、結末に向けて整理されつつある感じの巻でした。
興味深かったのが亡き又次の供養に日を限って提供された面影膳が、この年の料理番付の関脇になったエピソード。番付の上位に載った話題の料理を食べさせろと連日押し寄せる一見客の為、三日精進以外の日も面影膳を売り出す方法もある。でも主人の種市はそれを拒否して、「面影膳、文月十三日から十五日の三日間のみ」と書いた紙を表に貼って、番付後も提供することはしない。「この時とばかり面影膳を売り出したら、つる家は料理屋として長くは続かない。そうしなかったことが常客をどれほど安堵させ、また誇らしく思わせているか」と名店「一柳」の主人・柳吾は、種市の判断を高く評価します。読者も同じ気持ちになる訳ですが、でも実際はこうした判断はかなり勇気がいるし、「マスコミで紹介されました!」と看板商品を大量に売り出す店の方が現実には多い。料理屋の理想を貫けるのはフィクションだから・・と言う気もします。でも、考えてみれば「すや」の「きんとん」や「老松」の「夏柑糖」も有名だけど旬の時期だけ。夏蜜糖なんて夏の盛りにもう販売終了してしまいます。他の産地のものを使って期間延長する手もあるけど、萩の契約農家のものだけを使うから終了期間はその年によってまちまちです。澪は「利を薄くして、少しでも多くの人に買ってもらう商い」と「利を厚くして、それが買える人だけに買ってもらう商い」どちらが正しい訳ではないけれど、どちらのスタンスで行くかは料理人の澪にとって大事なこと。その方向が見えたところで、この巻が終わりました。次はいよいよラストです。
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