「少年・あかね雲」

131.jpg井上靖の「少年・あかね雲」を読みました。井上靖は10代の頃に好きだった作家。特に「しろばんば」「夏草冬濤」「北の海」の自伝的小説三部作が好きでした。古書の100円コーナーで懐かしい作家の名前を目にして、久しぶりに読んでみました。教科書に載ってそうな、あるいは入試問題に使われそうな文章だと思ったのは、入試前後によく読んだからかも知れませんが、現代の作家とは文体や空気感が違うのと、小説に描かれた日本が遠いものになっていることを実感したせいもあるように思います。
18編はいずれも「しろばんば」同様に伊豆で過ごした少年時代の記憶をモチーフに描かれています。大正の頃の田舎の子供って、となりの集落の子に対するライバル心や都会から来た者への憧れや反発が混じったような独特の感情を抱いていたようで、避暑に訪れた女性に近づいていって囃し立てたり、後をつけたり、気になる女性に会いに来た大学生に石をぶつけたり、カップルが心中するのではと偵察したり。その中で垣間見える大人たちの世界。駆け落ちの伝言役となって使い走りなんかもする。逗留者や新参者の噂はすぐに集落中に流れ、大人の会話を聞いて子供たちもちゃんと情報を得ているけど、「メカケは魔法を使うかも知れない」なんてことも言ったりする。村の一大イベントだった競馬が行われた馬場は、大人になって訪れると驚くほど狭くて、桜の大樹もそれほど大きくなかったという「馬とばし」が、特に印象的。昔よく読んだ井上作品はラストが一枚の絵を見るようで、その絵画的結末に向かって物語が進んでいくのがお気に入りでした。この短編集も切ない余情を残すものが多く、やっぱり魅力的な作家だなと思うんですが、いまどきの若い人って井上靖を読んだりするんでしょうか?入試にももはやこういう文章は出てこないのかも知れません。
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