「少将滋幹の母」

1-470.jpgバーナードリーチ展を観に滋賀県立近代美術館に行った時、常設展に小倉遊亀の「少将滋幹の母」がありました。谷崎潤一郎の小説の挿絵を小倉遊亀が描いてたんですね、なんと豪華な、・・と思って小説を読むことにしました。
大学以来の再読ですが、これが見事に忘れてました。少将滋幹・・と言いながら、滋幹ってこんなに出てこなかったっけ?というくらい前半は平中や時平の話がメイン。好色漢の平中が侍従の君に恋文を出しても出しても返事が来ないので、「見たという二文字だけの御返事でもお寄こしになって下さい」と書くと「見た」という二字を破いて入れた返事が来た話、そんなにつれない侍従の君の汚物を見れば、彼女を嫌いになるだろうとお虎子を盗んで蓋を開けると丁子の良い匂いがしたという話、時平が正月の宴席の土産にと国経の若く美しい妻を大勢の目の前で奪って行った話などの古典の有名エピソードは恩師M先生から聞いて知ったと思っていたけど、この作品に書かれていたのでした。近年読んだ「痴人の愛」や「犯罪小説集」等の大衆的な作品と違って、こちらは見事な純文学で、谷崎の守備範囲の広さを再認識しますが、それでも美しい妻を年老いた自分だけのものにするのは忍びないという心理や幼い頃の母の面影を崇拝する滋幹の心情などは、やっぱり谷崎作品に共通するもの。ラストの滋幹と母の再会場面は本当にドラマチックで、映画を見る様に情景が浮かんで来ました。この作品は東京・大阪の両毎日新聞に連載されたそうで、当時の新聞って格調高かったんですね。しかも一般的な新聞小説と違って、全編完成されてから発表されたとか。文豪のこだわりを感じます。ちなみにこの作品を読み終えたのは三条の文椿ビルの「星雲」というクラシック音楽を流すカフェ。小説のクライマックスをBGMの如く盛り上げてくれたのが、劇的なショパンの調べでした。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

モモ&こむぎ母

Author:モモ&こむぎ母
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR